大判例

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名古屋高等裁判所 昭和26年(う)804号 判決

仍て先づ職権を以て調査するに公判期日に於ける訴訟手続については公判調書を作成し同調書には刑事訴訟規則の定めるところにより公判期日における審判に関する重要な事項を記載しなければならないこと、右公判調書には公判廷に列席した裁判長又は単独裁判官が裁判所書記官と共に署名捺印すべきものであること、若し裁判長に差支あるときは他の裁判官に於て、単独裁判官に差支あるときは裁判所書記官に於て其事由を附記して署名捺印しなければならないこと、公判期日に於ける訴訟手続は公判調書のみによつて証明し得るものであることは刑事訴訟法第四十八条第五十二条刑事訴訟規則第四十四条第四十六条の各規定に照し明瞭である。斯の如く公判調書は公判廷に於ける訴訟手続を証明すベき最も重要な書類であるからその調書にはその公判の審理に関与した裁判長又は単独裁料官が裁判所書記官と共に署名捺印し若し差支の場合は他の裁判官又は裁判所書記官がその事由を附記して署名捺印しその調書記載の通り訴訟手続が履践されたことを担保するのである。従て公判調書に審理した裁判長又は単独裁判官の署名捺印がなく且之に代る差支事由の附記並他の裁判官又は裁判所書記官の署名捺印がないときは当該公判の審理に立会つた裁判官が何人であるか不明であるから斯る公判調書は無効のものと謂はなければならない。而して本件訴訟記録を査閲するに原審第二回公判調書(昭和二十六年四月五月)には裁判官武川昇一、裁判所書記官補砂田和夫列席の上検察官事務取扱検察事務官中島薫立会公判を開廷し公判の審理を為し弁論を終結判決言渡期日を同年四月九日と指定し閉廷した旨の記載があり、同調書末尾には同裁判所書記官補の署名捺印があるのみで右列席裁判官武川昇一の署名捺印がなく且その差支の事由の附記並右書記官補の署名捺印のないこと明であるから右公判に列席した裁判官が何人であるか不明に帰し右公判調書は無効たるを免れない。従て同公判調書記載の通り訴訟手続が行はれたかどうかも証明するに由ないから結局訴訟手続に関する法令の違反あることに帰着し而も右法令違反が判決に影響を及ぼすことは右公判調書の記載丈に徴しても明白であつて到底破棄を免れない。

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